
乳化とは
(1)乳化とは
身の回りには乳化した食品がさまざまあります。
乳化とは、本来混ざり合わない水と油のように、一方の液体が微細な粒子となって他方の液体中に分散した状態を指します。
(2)乳化剤の役割
乳化物(エマルション)には「O/W型エマルション」のように水中に油滴が分散しているものや、「W/O型エマルション」のように油中に水滴が分散しているものがあります。
これらの安定には、親水性と疎水性の両方の性質を持つ乳化剤が重要な役割を果たします。
乳化剤は、水と油の界面に吸着し、界面張力を低下させることで微細な粒子を形成しやすくし、合一を防いで安定な状態を保ちます。

乳化剤の構造と性質
食品用乳化剤は、水になじみやすい親水基と油になじみやすい疎水基を分子内に併せ持つ両親媒性物質です。
この構造的特徴により、水と油のように通常混ざり合わない物質の界面に吸着し、界面張力を低下させることで、油滴を微細な状態で水中に分散させる(O/W型エマルション)、あるいは水滴を油中に分散させる(W/O型エマルション)ことを可能にします。



乳化剤の種類
(1)乳化剤の種類
食品に用いられる乳化剤には様々な種類があり、それぞれ異なる化学構造と特性を有しています。親水基である多価アルコールと疎水基である脂肪酸で構成されており、多価アルコールの種類が変わることで様々な乳化剤となります。
ショ糖脂肪酸エステルとポリグリセリン脂肪酸エステルを含めて、代表的なものとして下記の種類が挙げられます。
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- ショ糖脂肪酸エステル(シュガーエステル)
- ポリグリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリンエステル)
- グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリド)
- ソルビタン脂肪酸エステル
- プロピレングリコール脂肪酸エステル
- ポリソルベート
- 有機酸モノグリセリド
(2)HLB(Hydrophilic Lipophilic Balance:親水性親油性バランス)とは
HLBとは、乳化剤の親水性と親油性のバランスを表す指標です 。0から20までの数値で示され、数値が小さいほど親油性が高く、大きいほど親水性が高いことを意味します 。HLB値は、使用する目的に合った乳化剤を選択する際の目安となります 。
ショ糖脂肪酸エステルとポリグリセリン脂肪酸エステルは親水基中の水酸基の数の多さからショ糖脂肪酸エステルは最大8個、ポリグリセリン脂肪酸エステルは最大12個の脂肪酸を結合することができます。それにより、幅広いHLBの銘柄を作り分けることができるのです。

乳化剤の特徴と用途
食品用乳化剤の最も重要な特徴は、乳化という本来混ざり合わない物質を安定に分散させる機能ですが、それ以外にも多岐にわたる機能を有しています。
食品用乳化剤は、その多様な機能により、幅広い食品分野で利用されています。具体的な用途は下記の例などが挙げられます。
機能分類 | 機能例 | 応用例 |
界面活性 | 表面張力低下 | 食品の洗浄 |
乳化安定 | ミルクコーヒーの乳化安定 | |
分散 | 炭酸Caの分散、酸化チタンの分散 | |
起泡性 | ホイップクリームやケーキのボリューム向上 | |
消泡性 | 飲料の噴きこぼれ防止、発酵生産時の抑泡 | |
可溶化 | 飲料の添加原料の透明化 | |
澱粉への効果 (複合体形成) |
老化防止 | パン、クッキーなどの保存性向上 |
糊化遅延 | 小麦粉製品の焼成時のふくらみ向上 | |
生地粘度低下 | デンプン生地の機械耐性向上 | |
蛋白質への効果 | グルテン形成促進 | 小麦粉製品の品質向上 |
冷凍変性抑制 | 水練り製品の冷凍耐性向上 | |
油脂への効果 | 結晶化促進、遅延 | 乳化物の冷凍耐性向上、フライ油の固化防止 |
結晶微細化、粗大化防止 | チョコレートのブルーム防止 | |
油脂粘度低下、増粘 | チョコレートの品質向上、油脂への小麦分散 | |
粉体流動性改善 | 固結防止 | 粉末調味料の固結防止、流動性改善 |
打錠、滑沢 | タブレット菓子や錠剤の滑沢性向上 |
よくあるご質問
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